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#3406
ぐるちゃんねる
ゲスト

1月の極寒の朝、峠を走る。冷気が鼻をツンとさせた。

そんな日に乗る理由はSRの音色がより際立つからだ。

頂上に着き、エンジンを切ると同時に静寂が戻り、SRがキンキンと鳴き出す。

ベンチに座りタバコをくゆらせていると、ふと昔を思い出した。

中学で知り合った友人『ユー』。彼は帰宅部、俺はサッカー部だったが、互いにバイク好きで仲良くなるのに時間はかからなかった。

ミスターバイクBGの「キリン」が好きなところも気が合った。

16になると警察署で原付免許を取り、彼はDio俺はJog。いち早く中免を取得した彼を俺は追いかけた。

彼はGB400TT、俺は親のお古のクラブマンで休日に峠へと行くと、滑るような彼の走りについて行けず、カーブごとに見えなくなった。

大学時代の北海道ツーリングは人生の宝になるくらい楽しかった。

彼は大型も取りGB500TTへステップアップ。今はなき免許試験場での合格は異例の早さだった。

 

時は流れ、私は念願のSR 400ファイナルエディションリミテッドを購入。いつもの峠にやってきた。

ブロンズのホイール、黒のサンバーストに惚れ惚れしながらタバコを吸い終わる頃に、聞き慣れたGB500TTの音。

私は白髪も混じり、腹も出たが、彼はいつまでも若い。

「単気筒はいいよな」「セルは楽だぜ」「キックがいいんだよ」「ホンダ最高」「いやヤマハだ」そして最後は「お互い絶版だからあいこだな」

結局そこに収まる。

 

 

 

 

約20年前彼はこの世を去った。1月の冷え込んだ日、タイヤ交換に行く途中、緩やかなカーブでマンホールにリアタイヤを取られハイサイド。今では不慮の事故と思えるようになった。

 

ヘルメットを被り、キックペダルを踏下ろすと、澄んだ空気をいだく山々にSRの鼓動が響いた。彼を追いかけるように峠を下る。走り慣れた道、隅々までコースを覚えているが、未だ『ユー』に追いつけないまま。