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2022年4月23日 6:32 PM
#1237
ゲスト
<p style=”text-align: left;”>「お兄ちゃん待ってよー。」</p>
大きめの自転車をこぐ3歳下の妹が叫ぶ。
「早く来いよ!」
好きな駄菓子屋へ妹をせかした。
2人兄妹の私達は、自営業で両親が忙しく一緒に遊ぶことが多かった。
中学高校と部活や友達との時間を過ごすようになり、いつの間にか遊ぶこともなくなった。
私は大学、妹は専門学校へ進み、会うことすらなくなった。
卒業を迎え、私達はサービス業の実家を手伝うため帰郷。
定休日が平日で友達と休みが合わず、また妹と遊ぶことが多くなった。
冬はスキーにハマり、12月から5月のゴールデンウィークまでほとんどの休みをゲレンデで過ごした。
白銀の世界は日常を忘れさせ、頂上からふもとまでノンストップで滑りおりると、遅れてきた妹が
「お兄ちゃんちょっと待ってよ!」と怒らせることもしばしば。
春が来てスキーが終わると、私は単車SRとツーリング、それを見た妹は中型免許に挑戦、150センチ足らずの身長にもかかわらず一発合格でCB400SFを購入。
ツーリングプランはもっぱら私の役目。今日は雨だが明日の休みは晴天予報。高原のワインディングが最高のコンディションなのは、ライダーなら言わずもがな。
明朝胸のすくような空の下、SRとCBで走り出す。
目的の高原に近づくと、あまりの息をのむ景色にスピードを上げる。SRのパルスが澄んだ空気を叩いた。
バックミラーを覗くと離れていくCB。インカムから聞こえるお決まりの台詞。
(いつものことか…)
私はさらにアクセルを開けると、妹の声をかき消すように、キャプトンマフラーがいつもより歯切れの良い音色を奏でた。