【YZF-R7】五感で感じるSSの変遷:第一部【YSP横浜戸塚】

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時代が望んだ【感じ取れる官能性能】

ヤマハから登場した、新世代スーパースポーツ【YZF-R7】が話題です。特に真新しい技術をふんだんに使った一般的な「SS」というものとは一線を画す考え方で登場しているのですが、メーカーのカタログサイトにはSSの文字が並びます。もちろんヤマハのラインナップには本格的なスーパースポーツとして名高い「YZF-R1M」なども存在しています。ただしR7に限っては妥協なく仕上げられたR1シリーズのような最新のデバイスを駆使し徹底的に鍛え上げたアスリート的な意味合いとはまた違った解釈が与えられているようです。その真意を探るには旧態然とした発想では見つけることのできない今時のニーズを再考する必要がありそうです。

もともとヤマハは、2014年にYZF-R25シリーズを発表するにあたり「毎日乗れるスーパースポーツ」というコンセプトを掲げていました。その時、個人的には単純に(乗りやすくて見た目がSSなのね)という解釈をした記憶があるのですが、今回のR7のキャッチコピーを見てみるとどうやらそういうことではないようです。R25自体がエントリーモデルの役割を担う排気量だったので、余計にわかりづらかったのですが今回のR7の登場によりそのSSというジャンルに対するメーカーサイドの解釈の意味合いがはっきりしてきたように感じます。今回のコンセプトは“YOUR” Super Sportという切り口でのアピールであり、R7の車体構成を見ることで単純な「速くて軽けりゃSS」では通用しなくなった時代の、より洗練されたユーザーニーズにこたえられるYZFシリーズの目指す一つの方向性を感じ取ることができるからです。

R7は二輪業界に対してスーパースポーツの定義の再考を投げかけているのかもしれない。

スポーツバイクの新定義は人車一体感かもしれない

ここで少しベースとなったMT-07について触れてみます。水冷4ストローク・DOHC・直列2気筒688cm³のエンジンは、もちろん新設計ですが基本コンセプトは名車TRX850譲り。270度位相のこのエンジンは、軽く流すようなシーンでは非常に心地よく、まるで馬が軽く駆けるようにライダーを楽しませてくれます。R7のベースとなったMT-07では、良くしなる鋼管パイプフレームとの組み合わせによりカタログスペック以上に車体がスロットルと呼応して「前に出る」感覚をライダーに与えてくれる気持ちの良いものですが、ひとたび鞭を入れればまるで地面に吸い付くような接地感を感じさせる、非常に面白いエンジンです。リアタイヤとライダーの右手が直結したような、指先でアスファルトを鷲掴みにしたようなダイレクトな操作感はライダーの「自分で操縦している」という満足感を与えてくれます。そういった意味では接地感を生み出すのは足回りの仕事だけではないということなのでしょう。こういった人とバイクの意思がシンクロするような感覚を気軽に味わえる大型バイクはなかなか珍しく、しかもそれを意図して作り出しているエンジンに対する製造スキルはさすがヤマハはエンジン屋、といった所です。ライダーに緊張感を与えずのびのびと走るこのマシンの最大の驚きは、真新しい技術をほとんど使っていないといった所でした。MT-07や今回ご紹介するYZF-R7にも、今やモデルによっては250ccにも搭載されるような電子制御スロットルをはじめとする最新のデバイスを搭載せず、従来からの手法により仕立てられています。ヤマハが2014年当時提示していた「クロスプレーンコンセプト」にのっとり、スロットル操作に対してリアタイヤがリニアに反応する事に重点を置いて開発されています。もちろんそこで目指したものはライダーとマシンの究極の一体感だったのだと思います。そしてその発想自体はもちろん今も色濃く受け継がれ、三気筒120度クランクのMT-09(2型)や並列2気筒180度クランクのYZF-R25/03シリーズ、MT-25/03シリーズなどその後発売される数台の車両で熟成されていくのです。

今までとは明らかに方向性が違うフェイスデザイン

熟成のコンポーネントに用意された”2つの大きな”スパイス

スポーツバイクフリークから切望されていたミドルクラスの新型SSモデルを開発するにあたり、ベースとなるMT-07に対してフレームをはじめとしてエンジン、足回りと多岐にわたりブラッシュアップが施されています。ただ、そのどれもが元ある素材を生かしたプラスアルファになっており、ベースモデルの基本性能の高さがうかがえます。あえてトータルバランスを崩すような変更は加えずに、必要最低限の変更に抑えながらも要所にはコストをかけてR7のキャラクターを作り上げています。その中でも二つの大きな変更点として、一つ目は強化された前後サスペンションに合わせて追加されたアルミ製センターブレースが挙げられます。

MT-07のピボット部(撮影用にカバーを外しています)中央にピボットシャフトとナットが見える
YZF-R7のピボット部。追加されたアルミ製センターブレースが見える

画像では分かりづらいのですが、MT-07ではもともとスイングアームでフレームを挟み込む形でピボット部を構成していましたが、R7ではそこに追加で外側から挟み込むようにアルミ製センターブレースを追加して剛性を強化し、剛性の高い倒立フォークなどとバランスをとっています。

そしてもう一つはキャスター角の変更です。MT-07比で11度立てることにより前輪分担荷重を増やしコーナリング安定性を向上しています。その変更に伴いフォークオフセットを5mm短縮して直進安定性も確保しながらフロント周りのディメンションを最適化しています。

剛性確保のために肉抜きをしていないトップブリッジ。

まとめ

マーケットが切望していたこともあり、大きな話題性とともに市場に迎え入れられたミドルクラススーパースポーツYZF-R7。メーカーが掲げる”あなたのためのスーパースポーツ”というキャッチフレーズを掲げてヤマハが巻き起こしたこの一つの投げかけは、単に「誰にでも乗りやすい」という解釈ではくくれないように思います。車体や価格設定など随所に見受けられるチャレンジングな構想は、ネット社会により成熟した現代の、目の肥えたライダーたちに今後どのように受け止められていくのかは現段階では未知数です。

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